カブトムシ

会社の先輩二人が何やら話をしていた。

なんの話かと思ったら、

「うちで飼ってるカブトムシが成虫したんですよ」

「え〜うちのはもう1ヶ月以上土の中から出てこないんだけど」

自宅で飼ってるカブトムシの話だった。

申し訳ないが聞いているだけで寒気がした。

俺はカブトムシが苦手だ。

カブトムシが、というよりは虫全般が苦手なのだが、カブトムシは虫の中でもかなり苦手な部類だ。

理由は小学生の頃。

小学校低学年といえば、なぜかわからないがカブトムシが欲しくなる年代だ。

俺もみんなと同じようにカブトムシを飼いたいと思った。

石川の母方の田舎に帰省した時、家の近くで大量にカブトムシの幼虫を手に入れることができた。

その数なんと40匹。

俺は40匹ものカブトムシの幼虫が入った虫かごを見ながら、大量の成虫になったカブトムシが自分のものになる未来を妄想していたと思う。

しかし、家で虫かごを置いてから約1ヶ月後。

結局1匹たりとて幼虫たちは大人の姿になれなかった。

飼い主がずっと虫かごをベランダに置きっぱなしにしていたのだ。

直射日光が思いっきり当たる場所に放置していた結果、土はカピカピになり、虫かごの中では

ごめんなさい。寒気しすぎて文字を打てなくなりました。

そんなトラウマがあって、カブトムシを見るだけ、というかカブトムシのことを考えるだけで寒気がするようになってしまった。

冷静に考えればカブトムシに罪はなく、ひたすら育てる知識がないのに飼おうとした俺が悪い。

むしろカブトムシ側が俺を目の敵にするべきだ。

そのときに二度と虫を飼育しないことを誓った。

今は先輩の、1ヶ月以上土の中から出てこないカブトムシのことが気になってしょうがない。